えかきのまどや 雑記帳

動物関係,本,映画など 趣味の雑記帳です。

技の継承と信頼関係

法律事務所,相撲部屋,
プロ野球チームにみる
親方と弟子における
技の継承について
考えたいと思います。


最近は就職難もあってか
即独(即独立)も多いと
聞きますが。
通常は
司法試験に合格し
二回試験を通過すると
弁護士志望の方は
各法律事務所に就職すると
思います。


まず
法律事務所の戦略・戦術について
こんな本があります。

井関浩ほか
「 訴訟準備と審理のあり方(座談会)
- 裁判官・弁護士の複眼的アプローチ 」
小島武司ほか
『 民事実務読本 1 』 192頁
( 東京布井出版,第2版,1992 )

において
『 言いたいことを裁判所に言わせる戦術 』
の中の記述です。

 

少し長いので
要約いたします。

 

座談会の出席者である
井関 浩 弁護士
(元東京地裁判事・法務省官房参事官)
の発言です。

 

※( )内は
他の出席者の発言要旨などを
補足したものです。

僕が判事補のころ
岩田事務所が出してくる準備書面は
裁判所が確認したがる
何か,裁判所が
ものを言いたくなるような
真っ向から来ない
( 言いたいことを裁判官に言わせてしまう )
形の書面を最初に出してくる。

それで
「 裁判所はそうお考えですか 」て
涼しい顔して帰っちゃう。

その後,(岩田の)溝呂木 弁護士と
一緒にする仕事があったので
その話をすると笑われた。

( 全てのケースを
そのようにしてくるという
わけではないが )
こういう
用意周到に網にかける
老獪な準備書面は
ひとつの訴訟技術で
事務所の戦略
だと思う。

この本の初版は
1988年で少し古いのですが
この座眼会は
リアルで面白いです。

 

この発言で
くみ取れるのは
岩田事務所
( 現在の岩田合同事務所 )
のような一流の事務所は
事務所の戦略があり
「 老獪な準備書面 」に
表現されるように
訴訟術などの
その事務所の技が伝授されている
ということです。

 

案件により
戦略・戦術も
変えているでしょうから
それはそれで
別の奥義があるのでしょう。

 

また
弁護士に限らず
ビジネスマンも同様ですが
人の顔をみるという洞察力にも
優れていなければなりませんし
言い方は悪いですが
狐狸のような狡智も
なければなりません。

 

おそらく
若い弁護士は
海千山千の先輩弁護士から
秘伝の技を伝授され
場数を踏んで
育っていくことと思います。

 

話しは変わりますが

 

一流弁護士の
巧妙に繰り出される技の切れと
相手によって取り口を変えてくる
老獪さは
安美錦 ” の相撲のようです。

 

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安美錦の上手出し投げ - 稽古総見

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安美錦貴乃花

 

安美錦 の所属する伊勢ヶ濱部屋
親方は元・横綱の “ 旭富士 ” です。
安美錦の出す
鮮やかな 「出し投げ」 は
旭富士の現役時代を彷彿とさせます。

 

ところで
元・旭富士伊勢ヶ濱親方の解説は
話し方が
一見無愛想に感じるんだけれど
相撲巧者でしかも
横綱まで登り詰めた力士だけあって
技術面と精神面の解説に
深みがあって
なるほどと思うような説得力がある。

 

伊勢ヶ濱親方の
口数は少ないんだけど
時折見せる “ 茶目っ気 ” と
プロフェッショナルとしての
含蓄ある解説は
プロ野球の解説でいうと
落合博満 ” 氏と
重なるようなところが
あるんですよね。

 

教え方がしっかりしてるから
横綱日馬富士 ” を筆頭に
多くの関取を輩出することが
できるんだろうと思います。

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名勝負 千代の富士 - 旭富士 旭富士の初優勝

 

閑話休題
この旭富士の師匠はというと
前・大島親方
元・大関
相撲博士 “ 旭國 ”です。

 

旭國大島親方だった当時は
旭富士のほかに
旭道山 ”や“ 旭豊 ”もいて
彼らからも
絶妙な「出し投げ」 や
「肩透かし」が繰り出されました。


当時の大島勢が
これらの技を結構使っていて
伝統芸といえるほど
その切れとタイミングは
ピカイチだったことを覚えています。

 

おそらく
旭國直伝の技
だったのではないでしょうか。

 

それが
高弟,旭富士らに受け継がれ
さらに孫弟子の
安美錦らに
受け継がれてきているのだろうと
思います。

 

また
「肩透かし」や
「出し投げ」のほかに
気になっていたのは

 

当時の大島勢は
旭道山 ”や“ 旭天鵬 ”に
見られるように
「足袋」をよく履いていた気がします。

 

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旭道山(右) 対 貴闘力

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旭天鵬 (右)対 栃煌山

 

これも
旭國秘伝の策
だったのかなと思っています。

 

ほかにも
春日野勢の “ おっつけ ” や
鷲羽山 ”や“ 舞の海 ”など
多くの小兵力士を育てた
出羽の海部屋などに代表されるように
相撲部屋ごとに継承された伝統技が
現役力士たちに受け継がれています。

 

相撲以外のところでは
プロ野球でも

野村克也 監督が
キャッチャー 古田敦也
森祇晶 監督が
キャッチャー 伊東勤
広岡達朗 監督が
ショート 石毛宏典 を育て
技が伝授され
名プレイヤーたちを生みました。

 

また
名プレイヤー個人を育てるだけでなく
野村監督や広岡・森監督時代の
優勝経験のある選手たちが
引退後も各チームで
監督やコーチとして
重用されていたことは
記憶に新しいところです。

 

つまり
勝つための戦略・戦術や
チームのマネジメントを学んだ
選手たちへ
遺伝子が受け継がれていった
ということです。

 

この三氏が書いた
管理術や育成術を本は
当時
ビジネスにも通じるということで
話題になりましたが
今あらためて読んでも
なるほどと思うところがあります。

 

例えば
広岡達朗 氏の著作では
自著のものと
ジャーナリストによって
書かれたものとがありますが

 

自著のものでは
『 勝者の方程式 』
『 監督論 -「人は育つ」ことを選手に教えられた 』

 

ジャーナリストのものは
『 広岡野球の戦略 』 が
オススメです。

 

広岡 氏 が,
『 平成日本のよふけ 』
( フジテレビ系列 24:55 ~ 25:25 2001.1.29,2.5 放送 ) や
私の履歴書 14 』
日本経済新聞,2010.8.15 朝刊 )
などで
よく述べられるエピソードがあります。

 

広島カープのコーチ時代 に
根本陸夫 監督から
苑田聡彦 選手を
内野手として育てろ
との命が下されたが
苑田選手のプレーを見て
内野手としては上達しないと
監督に報告したところ
「 これは契約だからやるように。
責任は俺がもつ。」
と言われたそうです。
その後も
苑田選手と試行錯誤して
練習を続けていたところ
苑田選手が急成長しました。

 

広岡 氏 は
広島のコーチ時代
この経験から
「 人は必ず育つ。
能力に大差はない。
ただ伸び悩んでいる者は
答えを出すのが遅いだけ。
それを一緒に探してやるのが
コーチの役目。」
という
哲学を広島で得たと
述べていました。

 

至言です。
この言葉は
野球だけに留まらず
他の仕事にも参考になるはずです。

 

また
このエピソードの中で
根本 監督の
「 責任は俺がもつ。」
との言葉です。
上司のこの言葉で
部下はかなり楽になると思います。

 

やはり
監督,コーチ,選手,
その他スタッフの信頼があったので
後の西武やソフトバンク
「 勝てる組織 」 を
つくることができたのでしょう。

 

根本陸夫 氏のみに
焦点を当てて書かれた著書では
『 球界地図を変えた男 根本陸夫 』 が
オススメです。
これらを見ていくと
伝統の技は
軽々に教えることはできません。
まず
入ってきた部下や弟子を
何年かかけて
じっくりと見定めて
その人の
人柄や成長,やる気などを
確かめてから
信頼関係ができたところで
「 こいつなら教えてもいいや 」
ということになりますから
どの社会でも
信頼関係があってこそ
「技の継承」があると思います。

 

最近は
寿司屋の見習いに入った若者が
雑用ばかりさせて
寿司のにぎり方を
全然教えてくれないので
すぐに辞めてしまう
といった人が多いと聞きますが。
人となりもまだわからない者に
いきなり
「秘伝の技を教えてくれ」
と言われても
それは無理というものでしょう―。


~ 参考資料 ~

民事実務読本〈1〉相談・訴訟準備 (民事実務手続シリーズ)

民事実務読本〈1〉相談・訴訟準備 (民事実務手続シリーズ)

 
広岡野球の戦略―壁を突き破るニューリーダーの条件 (Mypal books)
 
勝者の方程式 (講談社文庫)

勝者の方程式 (講談社文庫)

 
監督論―「人は育つ」ことを選手に教えられた

監督論―「人は育つ」ことを選手に教えられた

 
球界地図を変えた男・根本陸夫 (日経ビジネス人文庫)

球界地図を変えた男・根本陸夫 (日経ビジネス人文庫)

 

以上

読んでいただき
ありがとうございました。