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えかきのまどや 雑記帳

動物関係,本,映画など 趣味の雑記帳です。

『 獣人雪男 』 映画と小説の相違点

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映画『 獣人雪男 』のストーリー を
書く上で
本編の映像を見た後に
東宝特撮映画の資料や
原作となった
香山滋の小説を参考にして
情報を付け加えていった。

 

すると
書いている途中や
書いた後に推敲しているときに
何か違和感があることに気付く。

 

映画『 獣人雪男 』は
未だDVD化がされていない
いわゆる “ 封印作品 ” なので
資料が豊富にあるわけでなく
限られたものしかない。

 

さらに出版されている
限られた資料の中でも
おそらく情報源となっている
大元の資料があって
それを参考にしていると思われるので
その内容と記述が
非常に似たものになっている。

そのため映画の資料としては
右にならえなので
色々な資料を見ても新たな情報がなく
あまり参考にはならなかった。

 

その中で詳しい資料を
いくつか参考にすると
皆,映画と小説の情報が
混在しているのである。

 

資料には
日本アルプス
K大学の山岳部が
雪男と遭遇した事件とあるが

映画の本編を見ると
最初のシーンで
取材に訪れた新聞記者は
トウア大学と言っており
K大学とは言っていない。

 

また事件に遭遇した
雪男が住んでいる場所について
資料では日本アルプスとなっている。
さらに
映画の宣伝においても
『 白馬でロケ 』と出ているので
当然舞台は
日本アルプスと思ってしまう。

 

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しかし本編を見ると
山の案内人の台詞から
『 ガラン谷 』の沢という
名称が出てくる。

 

最初はスルーして
そのまま書いてしまったのだが
『 ガラン谷 』は実在する谷であるが
日本アルプスだったっけ? と思い
調べ直してみると。

 

ガラン谷,ガラン沢は
志賀高原群馬県側に下って
群馬県と長野県の県境近くの
赤石山,横手山白根山に囲まれた
群馬県内に位置する。

 

過去に何人もの遭難死者を出し
『 魔のガラン谷 』と呼ばれる
場所である。
そこで
かつては入ったら遭難必至な
危険な場所として
足を踏み入れなかった
実在の『 魔の秘境 』を
物語に取り込んで
謎の雪男と隠れ部落が存在する
未踏の魔境としたほうが
わかりやすかったのだろう。

 

よって地理上は
北,中央,南アルプス
どこにも入らず
日本アルプスとは
全く異なる場所に位置するのである。

 

確かに映画を確認すると
日本アルプスであることを確認できる
台詞や描写がないことに気付く。
したがって
映画で舞台となった場所は
日本アルプスではなく
群馬県内のガラン谷と
その付近の山ではないだろうか。

 

ではなぜ資料には
K大学や日本アルプスといった
映画の本編には出てこない
情報が書かれているのか。

 

舞台となった日本アルプス
K大学という大学名
その他の資料からの情報では
雪男の体格が
身長3.5メートル,体重200キロ
という設定も
本編では語られておらず
これらは小説での設定である。
なお小説では
ガラン谷という名称は出てこない。

 

映画と小説との相違については
雪男の毛に関し
小説で設定されている色は
夏は岩肌に似せた濃灰色であるが
冬には白色に抜け替わり
雪の色と同化するといった
ユキウサギなどと同じ
保護色である。

 

しかし映画では
冬場での雪男の活動シーンが
ないので
白色の毛に覆われた場面はない。

 

登場人物についてもその設定が
若干異なる。

 

また小泉博士がこの調査に
参加するまでの経緯や
殺人事件が起きているため
本来ならば
素人が調査するのではなく
警察が動くはずであり
さらにマスコミも
事件後に取材に訪れたのみであり
通常ならば
もっと騒いでもいいような気がするが
映画には尺の都合もあってか
警察やマスコミが
なぜ熱心でないのかという
描写はない。

 

一方,原作ではそれらの経緯が
記されている。

 

まず小泉博士の映画での肩書は
動物学者であるが
原作では人類学者である。
そして参加の経緯について
小説では
雪男の探索について協力してほしいと
飯島が博士宅を訪れて
博士に同行を願い
さらに博士が会長を務めている
『 東亜地質学協会 』に資金提供を
お願いするが一蹴される。

 

ちなみにこの小説に登場する
『 東亜地質学協会 』から
映画の『 東亜大学 』になったと
思われる。

 

しかし博士は考え直し
雪男は存在すると確信し
学会を説得することはできなかったが
私財を売却して
飯島たちに資金提供をして
雪男探索に加わったとある。

 

警察やマスコミが非協力的な理由は
どうせ大熊などの獣の仕業であると
思って本腰を入れていないといった
理由が書かれている。

 

興行師の大場についての描写は
映画では
ずる賢く強引で荒っぽく
目的のためなら
他人を傷つけることも辞さない
といった性格だが。

  

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原作では
ずる賢いが臆病な性格である。

大場は雪男を捕らえるが
その後
雪男の逆襲に遭い
最後に殺されてしまうのは
映画も小説も同様であるが
殺され方は異なる。

 

小説では
子供の雪男は
大場には殺されていない。
しかし映画では
雪男の子供まで殺してしまう
といった
大場の悪辣ぶりが
より濃く出されており
最後は雪男に谷底へ
放り投げられて殺されることで
見る側にカタルシスを感じさせる。

ちなみに小説では
雪男が大場の首をねじ切って
呆気なく殺してしまうため
攻防もなく絵的に考えてもよくない。

 

さらに
原作では子供が殺されないため
ラストに大きな違いが出てくる。

 

そして最大の相違は
雪男の性格である。
まず雪男の暴れっぷりであるが
子供の雪男と二人になり
滅び行くことが確実であり
そのやるせなさから
暴れたのだろうということは
劇中においても小泉博士の
台詞にあり
原作でも同様の説明がある。

 

しかし小説では
そのやるせなさゆえに
破れかぶれで
人里に下りてきては
破壊,殺戮,暴行を繰り返しており
凶暴性がかなり強く押し出されている。

 

また
原作で最初に行方不明となった
梶と水沢は洞窟内で
遺体の姿で発見されるが
映画での武野の状況とは違い
雪男に助けられたのではなく
小泉博士いわく
知恵があり復讐心という感情を持つ
雪男のいやがらせか
もしくはさらに踏み込んで
人質として
利用しようとしたのではないかと
推測したように。
雪男の優しさといったものは
小説では感じられない。

 

一方,映画での雪男は
飯島の命を救い
武野の命を救おうとした
温厚な性格であり
怒り狂った原因も
大場によって
最後の希望である
子供を殺されたことが
要因であることが
場面から推測できる。

 

映画でも小説と同じく
雪男はチカのすむ隠れ部落を
襲撃し滅ぼすが
チカだけは生き残る。

 

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さらに雪男は道子をさらい
洞窟に逃げる。
その後に飯島たちが
雪男を追いかけ
洞窟内に入って行くと
雪男族が毒キノコを食べたために
死に絶えたことが明らかになる。

 

ラストにおいては
映画と小説とで結末が異なる。

 

小説では鉄砲で撃たれた雪男は
子供の雪男を抱いて
共に噴火口へ落ちていく。
そして
最後の雪男とその子供が
死ぬことにより
雪男族は全て死に絶えてしまうが
雪男族と共存してきた
隠れ部落のチカは生き残る。

 

一方,映画では
部落で一人残ったチカと
大場によって子供を殺され
一人残った雪男が
組み合ったまま
雪男がチカを道連れに
噴火口へと落ちていく。
これにより
今まで共存関係にあった雪男族と
隠れ部落の人々も
最後の雪男とチカが
共に噴火口に落ちたため
全てが滅んでしまう。

 

作品全体を見ると
小説の雪男は
破壊,殺戮,暴行を繰り返す
凶暴なモンスター
つまり獣人の獣としての側面が
強調されていて
人間性などは全く感じさせない。

 

しかし
映画の雪男は
獣人の人としての側面を強調し
非常にヒューマニスティックに
描かれている。

 

小説に比べて映画では
この最後に残った雪男の人間味と
ラストの悲哀感。
そして
悪徳興行師の大場のキャラクターを
より強欲で残忍なあくどい人物に
設定したことにより
見る側も雪男に感情移入されていく。

 

さらに
チカについても
仲間を全て失い一人残ったチカが
最初で最後の成就することのない
飯島への恋が愛となり
最後に覚悟を決めて
飯島のために自ら犠牲になることで
より悲壮感が増し
ペーソスを交えた描写になっている。

そして同じ道を辿ることになった
雪男とチカが命を落とすことで
見る側は心を打たれ
映画が終わった後も余韻が残る。

 

こうして『 獣人雪男 』の
小説と映画を見比べると
映画のストーリーのほうが
より緻密であり
もの悲しい展開と人間的な情から
雪男やチカに
感情移入されていくように
物話が構成され
非常によくできた作品に
仕上がっている。

 

これは映画の制作にあたり
脚本の村田武雄や
単なる怪物映画に終わらせず
人間ドラマとして演出した
監督の本多猪四郎
手腕が光った作品といえる。

 

そして恐怖感と悲哀感を出した
佐藤勝の音楽も本編とマッチして
より効果を上げている。

 

 

最後に付け加えると

この作品は結局のところ

宝田明のカッコ良さは罪である! ”

宝田明のカッコ良さは全てを崩壊させる! ”

宝田明のカッコ良さは怪物以上の破壊力を持つ! ”

といった感じかな・・・。

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~ 参考資料 ~ 

◇  映画 『 獣人雪男 』 制作・配給:東宝
 / 公開日:1955年8月14日

ゴジラ (ちくま文庫)

ゴジラ (ちくま文庫)

 
東宝特撮映画全史

東宝特撮映画全史

 

以上

読んでいただき
ありがとうございました。