★ のまどや 雑記帖 ★

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キングシーサーは何故強くないのか

キングシーサーに見る日本・沖縄の立場
ゴジラ対メカゴジラ考 )

 

琉球アズミ王族の守護獣

キングシーサー

魔除けとして置かれている

沖縄伝承の神獣シーサーを

そのまま巨大化させたような容姿で

その能力の特徴は

プリズム眼になっている

一方の眼から

敵の放った光線を吸収し

もう一方の眼から

威力を増幅して発射する

特殊能力を持っています。

 

それ以外の特徴的な能力は

動きの俊敏性などで

通常の動物が持ち得る能力以上のものは

持っていません。

 

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「ゴジラ対メカゴジラ」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第14作目
 - 「Godzilla Channel ゴジラ(東宝特撮)チャンネル」

 

特殊能力のプリズム眼

積極的に放って

攻撃するものではなく

あくまでも

相手の攻撃に対する

防御としての能力であり

 

ゴジラ熱線

キングギドラ引力光線といった

攻撃のための

積極的な飛び道具は持っていません。

 

また

キングシサーの地位

ゴジラを倒せるものは

 キングシーサーだけじゃ!」 と

天願老人の台詞にあるように

そこから推察すると

ゴジラの脅威から

沖縄(琉球)を守るための

守護獣であって

 

バラン(婆羅陀魏山神)のように

いつ暴れ出すかわからない

荒ぶる神を鎮めて祀る

といったものでもなく

危難が訪れない限り

眠っているだけ

平和な守護獣ですので

 

積極的に

攻撃・破壊をするための

特殊能力は持っていないと

考えられます。

 

しかし

ゴジラでなく

新たな敵 メカゴジラです。

メカゴジラの侵略・破壊を

阻止せんと現れて戦い

善戦しますが

メガゴジラの圧倒的な

攻撃力に押され

為す術がありません。

 

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「ゴジラ対メカゴジラ」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第14作目
 - 「Godzilla Channel ゴジラ(東宝特撮)チャンネル」

 

そこへ

かつて日本を蹂躙した

ゴジラが味方となって現れます。

本作品のゴジラ

熱線の飛び道具に加え

落雷により

全身を電磁石化させるという

新たな特殊パワーを備えています。

 

かつては敵としていた

強大な攻撃力を持った破壊神

ゴジラと手を組むことで

新たな強敵メカゴジラ

撃破することができました。

 

危難が去り

キングシーサー

万座毛の岩の中で

再び眠りにつきます。

 

さてこれを

日本の自衛隊

米軍にあてはめてみると

見事にあてはまります。

 

防御のみでは太刀打ちできない

新たな強大な敵に対し

かつて日本を徹底的に破壊し

恐怖に陥れた米軍と手を結び

米軍の持つ強大な攻撃力に守られ

敵と対峙するといった構図

非常に似ています。

 

したがって

キングシーサー

日本の立場の投影であり

積極的に攻撃・破壊する

飛び道具を持たず

防御のみの

自然権的能力しか持たない。

 

そのため

多彩で強力な破壊兵器をもった

敵には手も足も出ない

というように考えられます。

 

そこで

不十分な部分を

攻撃力を持ったものと

手を結ぶことで

外敵から守っていく

といった結論になります。

 

また

印象的なシーンで

ゴジラキングシーサー

メカゴジラ

全兵器乱射による怒涛の攻撃を

受けるシーンがありますが

 

「ゴジラ対メカゴジラ」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第14作目
 - 「Godzilla Channel ゴジラ(東宝特撮)チャンネル」

 

その際

キングシーサーの立ち位置が

ゴジラの後ろにいるため

あたかも

ゴジラを盾にしている様にも見えます。

 

「ゴジラ対メカゴジラ」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第14作目
 - 「Godzilla Channel ゴジラ(東宝特撮)チャンネル」

 

このカットの立ち位置からも

アメリカの傘に隠れた存在であり

戦力の主体となっているのは

ゴジラであるということが

印象づけられています。

 

その他の特徴として

キングシーサー

沖縄(琉球)に危機が迫ろうとも

簡単には目覚めてくれず

覚醒(発動)させるには

段階的なプロセスを必要としている

ところでしょう。

 

こういった

規定された ” 面倒な !? ” 

手続きを踏まなければ

活動できないといったところも

自衛隊の置かれている立場と

重なって見えます。

 

なお

この映画は1974年の作品

沖縄県は2年前の

1972年に日本へ返還されたこともあり

” 米軍さまさま ”” 米国追従 ” 

ということと

日本は攻撃力を持たないという

アピールをすることから

これらのような表現や設定に

なっているのではないでしょうか。

 

他方において

キングシーサーが眠り続けていることが

沖縄の安泰であり

安置されている

シーサーの置物を動かすこと

すなわち

キングシーサー

目覚めさせようとすること自体が

沖縄の危機であること。

 

つまりこの作品には

外部の者が手を入れて

かき回さなければ

沖縄は平穏であった

と汲み取れるような

メッセージも見られます。

 

興味深いのは

海から来る

ゴジラモスラ

それから(キングコング)。

彼らは

戦いが終わった後には

再び海へと帰って行きます。

 

これに対して

バランラドン

護国三聖獣

婆羅護吽(バラゴン),

最珠羅(モスラ,

魏怒羅(キングギドラなど

 

日本国土に出自を持つ怪獣

最終的には倒されてしまい

元の場所に帰ることができない

ということが常です。

 

これらが意味するものは

ゴジラモスラキングコング

海へと帰って行くことは

そもそも彼らが

異国の者の立場であるということ。

これに対して

バランラドン などの

国産の怪獣たちの立場は

現代社会にとって異物であり

容認されずに排除されてしまった

結果であり

 

バラン獣人雪男 にしても

旧態依然の隠れ部落では崇められ

受け入れられて共存していましたが

隠れ部落の終焉と共に滅び

倒されていきます。

 

バラン 獣人雪男

隠れ部落の関係は

キングシーサー

琉球アズミ王族の関係と同様 

外部の者の侵入がなければ

安寧が保たれていたと思われますが

隠れ部落 = 抵抗勢力守旧派として

印象付けられる演出がなされ

隠れ部落社会への感情移入は

中々できません。

 

これは

新たな時代を迎えるに当たっての

体制転換 を意味し

それを是とするものと考えられます。

 

翻って

この映画の キングシーサー

日本国土に出自を持つ怪獣

であるにもかかわらず

倒されずに

元に居た場所へと帰る

描写があることは

非常に特異であり

これは

体制転換ではなく

沖縄が日本の手に戻り

再びキングシーサー

防衛力ないし

精神の拠り所を含めた守護として

受け入れて存続させることで

元来の平穏と安泰を願うこと

意味しているものと推察します。

 

物語の設定上

本作品では米軍の投影としての

立場と思われる 

ゴジラの介入により

ブラックホール第3惑星人の

沖縄侵攻は阻止されました。

その一方で

常道ならば守旧派となりかねない

琉球アズミ王族も

体制転換の対象となって然りですが

琉球アズミ王族 = 沖縄 として

本作品では描かれていると考えられ

琉球アズミ王族にも

感情移入できるような

演出がなされていて

天願老人に

外部の者への思いを吐露させることで

沖縄の心境が表現されています。

 

つまりこれは

バラン 獣人雪男

隠れ部落の関係とは状況が異なり 

単純なレジーム・チェンジの

メタファーではなく

沖縄が置かれている複雑な立場

物語っているのではないでしょうか。

 

怪獣特撮娯楽映画としての

見方だけでなく

色々な角度から見れば

この映画から

沖縄の歴史や置かれている環境について

関心を持つきっかけになります。

 

また 

ゴジラ対メカゴジラ

次回作の

メカゴジラの逆襲

通して観ると

ブラックホール第3惑星人の企て

何を意味し

この 2部作の背景にあるテーマ

何であるのかが見えてきます。

 

年月を経て・・・

 

ゴジラ FINAL WARS  では

沖縄の守護獣である

キングシーサー

X星人にコントロールされ

皮肉にも沖縄を破壊します。

 

攻撃的飛び道具を持っていなくても

そこは力をもった怪物であり

暴力装置としての位置づけでもあるので

コントロールするものによって

破壊兵器となり得るということです。

 

この映画においても

最終的に破壊神ゴジラの力を借りて

敵を倒すといった

「 毒を以て毒を制する 」

形式のストーリーになっています。

 

ゴジラ作品全体を通して感じることは

ゴジラという怪獣をフィルターとして

必要な戦力やリスクの高い科学技術

人間にとって

欠かせない存在であるとしても

それをコントロールしきれるのかという

テーマが込められている気がします。

 

 

~ 参考資料 ~

ゴジラ FINAL WARS スタンダード・エディション [DVD]

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メカゴジラの逆襲 東宝DVD名作セレクション
 

 

以上

読んでいただき

ありがとうございました。